2014年08月23日

錦えもん製作記

ようやく商品として日の目を見ましたので、何考えて作ってたか、
なんて製作にまつわる話を。

最初に言っておきますが、ナゲーす。
全然、商品手に取れないから1週間くらいチマチマ書き足してたんだぜ。
でもやっと今日、手に入ったぜ。ウレッシブ。

つーわけで、元気か覚悟か読解力のある方のみ、先にどうぞ。


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さて、実に原型の完成はほぼ1年前。
ちょうど今日、次回造形王の発表がありましたが、もうとっくに次にとりかかって
ますかんね。

とにかく7月くらいにモチーフが錦えもんに決まった段階で、尾田作品の和キャラという意味でも
サンダー作品という意味でも、浮世絵っぽいことをやろうと考えてました。


具体的に浮世絵的なアプローチとして強く意識してたのは、北斎の組み込む
幾何学的なアプローチ。普通の絵に見えてるようで、実は計算しつくされている
構成ってのが、凄く知的かつ攻撃的で、俺にはカッコよく思えるわけです。

江戸だ和風だ浮世絵だなどと口にする限り、当時の知的レベルに挑めなければ
意味がない。ただ古いアイコンとして和風を使うんじゃバカまるだしすからね。
知的かつカッコいいフィギュアは見たことないし、よーし、いろいろやってやるぞと

思ったわけですが、すぐに挫折。

というのも絵画と違って、立体は視点が移動するので幾何学構成を組み込んでも
見る角度が変わればすぐ破綻してしまう。これには正直参りまして。
んー、じゃあやっぱ普通の彫刻、塑像として追い込むしかないのか・・・

と、思ったわけですが、いやちょっと待てよ、と。
視点が移動するのが立体の特徴なら、それを利用して視点ごとに表情や意味が
変わるものにすればいいじゃねえか。確かベルニーニもやってた。

去年の大会を見る限り展示は回り込んで見る様になってる。
だったら見ていくうちに表情が変わるようなものをやればいいと路線変更。
子供が作品周囲をグルリと回ってキラキラと目を輝かせて見るんだ、これは
やりがいがある!連中に立体の魅力を叩き込んでやるぜ!と
燃えたのを覚えております。



で、基本的に4面構成で考えました。

正面であるチャンバラ面から、尾田面に行き、隠し面が出て、最後まとまるっつー流れ。
順番に各面をご説明しますと

カッコいいチャンバラ面

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チャンバラという魅せる殺陣が発達した文化の中で、一番ウソで派手ながら
大見得を切っている技と言えば、後ろ受け。そのカッコよさプラス
刀越しに目線を据える、商品原型ではやっちゃいけないけど、これまた
カッコいい眼力にポイントを。最後までカタナの角度は悩んだ記憶あり。



忠実再現、尾田表情面

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尾田絵の特徴である口の描き方を存分に堪能していただくべく
尾田臭全開の表情がより印象づくよう、コマのように腕と刀で囲んで
アピールする尾田表情見て見て面。ここが出来なかったらそもそも
仕事する資格なし。ちゃんと立体的に似せきったつもりです。


見て得する隠し情報面

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隠れている部分が見えてきて、あれ受身かなと思ったら、実は
斬る気マンマンで、鯉口を切って抜刀寸前だったとわかる面。
いろいろな発見で、印象が転となってくれればいいなと。
見上げるとチョンマゲのタモの部分。鬢付け油でまとめた髪が、少しだけ
重さで割れてる感じとか、スーパー楽しそう。と見ていただきたい面。
左肩も少しだけまくり上げました。これも往年のチャンバラでは定番の
バンツマ的やる気表現すね。


最後こそ重要、残心面

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複雑に三角が入り乱れる構成から、すっと伸びた毛ズネ。
その先がシッカと下駄の端を掴んでいる指につながり、緊張感が
隅々まで行き届いてますよ的な、最後に筆をすーっと下ろすが如く
作品として決着をつける気持ちのいい伸びやか面。


みたいなことを考えながら作っておりました。


問題は規定サイズぎりぎりまで追い込んだ原型だったので
それをどこまで現実的に組み込むかという点。

実際、こんくらいにタイトにすり合わせまして。

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規定内だと腕や足はここまでしか伸ばせない。着物のナビキはここまで。
全体のサイズは2回、タメシを作って計算して検討し、さらに
そこから変更して決めてます。もう完全にギッチギチで攻めました。
確か原型での身長は最終的に24センチで攻めたはず。
さらに重量制限もあったんで、ほんと夜霧のせめぎあいでした。


で、どうにか意図を組み込んだモノが出来上がったわけですが
いざ実物展示となったら会場では16体を段に置いてあるだけ。
グルリ回って見られるんじゃなかったんかーい!

という叫び空しく、普通に最悪の角度でずっと展示されてました。
そうとは知らずにはりきって構成とか考えちゃってさー、俺ってお人よし。
子供がぐるっとまわって見て目を輝かす?ははは、いい夢見られたじゃねーか。
エテシテ人生そんなもんす。


にしても背中が正面ってのはどうしても受け入れてもらえないらしく
みんな顔正面こそが見るべき角度とばかりに、この角度を狙ってくるわけです

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いやいやいや、顔はまっすぐで見やすいけど、顔ばっか中心で全体はおかしいだろ。
もっと全体見ろ。顔は心配しなくてもちゃんと作ってらい、的な角度の写真を
バンバン見かけるわけです。おっかしいなコノヤロウ。
そこはチャンバラ面と尾田面に意味を持たせるために捨ててた角度でございますよ
このドテチン。

しかし逆に言えばこのアホ原型師、フィギュアだったらちゃんと全方向バランスとれ、
というご意見。ごもっともです。

って何言ってんだこのデコッパチ。この崩しがあって、次が映えるっつー
グルリ巡回する角度でを計算した…あ、巡回してねーのか。じゃあ
しょうがねーな。イモ角度を作ったやつが悪いな。ええ私ですとも。カーー、ペッ。

とはいえ、まだ夢見て作ってた頃、巡回角度の中でイチオシ角度だけ、
華を持たせる仕掛けが。というか、花を咲かせようと思ってました。


そもそもチャンバラ面と残心面はどちらも三角を基準にしてます。
全体の構成が三角印象を強くしてあるんですが、途中一度だけ
6方向から線が交わり、六花(リッカ)が咲くようにしてあるわけです。
その角度になった時に、整理された図形の印象がスっと入ってくるように。

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炎を斬る錦えもんのキャラの中での冷静さ、登場した状況も含め
六花、すなわち雪の結晶のような図形が、グルリと回ってみている最中
一瞬浮かび上がるなんつーのはちょいと粋なんじゃねーか、という演出。
炎の中に垣間見えた刹那の花。見えない着物の裏地に気をつかう
日本の美徳みたいな感じすかね。気付かれないくらいのレベルでそんな構成が
刷り込まれるといいな、なんて。だから左手はグっと鞘を押し込んで
鞘間を広げてたんですなー。


あと、裏ですよね。
ちゃんと作ってますぜ。

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鼻緒留めまで完璧です。文化保存レベルで無駄にゲタ完全再現。

フンドシの色に関しては、原形完成前に発表された夏イラストで、赤フンだったので
赤を採用。あぶねー、白にするとこだったけど、ちゃんとオフィシャルカラー。

あと実は屁で会話するキャラで登場したものの、錦えもんのフンドシが見えるような
品格が落ちるカットってのがない。これほど足が開くとフンドシが前から
見えないと不自然なんですが、そこで見えちゃうとこれまた錦えもんという
キャラクターから離れちゃう。ので、ギリギリの長さで着物のウソをつくのが
厄介でした。愛すべきズッコケと、下衆な視点というのは似ているようで
違いますから、そのへんはキッチリ品性下劣にならないよう、留意しました。

製品化で、ありがたかったのは目。個人的にはタンポ印刷の目が嫌いなので
きちんと立体感が出るように隈取も丁寧に彫ったんですが、そこをキッチリ再現。
なにげに素晴らしいす。

彩色に関する規定もいろいろあったんで、とにかくまず造形で成立するよう
彫刻はメリハリつけてます。着物なんかシワのトップは織物、絣のラインが出るよう
強めに作ってあったり。それを見事に削り込んで成型色2種を真ん中で
接着しているのは感心しました。すげーす。

とにかく、自分が考える造形物ってのは、うねるような手ごたえというか
空間を巻き込むような存在感があるのが理想的。それは静かなポーズでも
出せるものだと思うんですが、爆炎を切り裂く侍にふさわしいポージングを
追った結果、こうなりましたが、いかがだったでしょうか。

やっとこ商品を手にとってほぼ1年ぶりに邂逅した結果
作った本人は、おおーけっこうやるじゃん、と御満悦。
でも1年経ってるからな。もう次は絶対これに勝つぜ。って感じです。

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posted by サンダーロードスタイル at 23:42| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする