2015年11月09日

11月第2週 超人ホイホイ週報

Gecco製ガッツのレビューやら、もう売られているらしいショウリン話やら
いろいろ書きたい事はあるんですが、順番からして、牛話。

今回はバッファローマンの製作記です。
ここ数日チマチマと書き進めていたので長いうえに、さほど面白くはないですが。

それを書き終ってから、「GILLGILL」の塚田君のシレーヌ製作記を見つけ
読んだんですが、鮮烈な印象を受けて読後が気持ちよかったです。
青春か、っつー。 造型する人は読んでみるといいぜ。

それに引き換え、俺のはシレーヌの1/10くらいの作業量のくせに
文章量は20倍くらいあるような気が。軽く屁こいたらミ、くらいのがっくり感。
我ながらしょうがねえ野郎だな、という自覚はちゃんとあります。安心して下さい。

つーわけで毎度の事ながら、酔狂な方だけ続きを読んで下さい。





まず前回の顛末、カピラリア週報が去年の11月でしたから、なんともう丸1年。

前作KINスグルはこれはこれで究極の、というつもりで作ったわけです。
最後に打って出る切り札、シンガリ、頼みの綱としての
希望を背負って立てるキン肉マンの姿を追いました。

が、そこで次にバッファローマン。

前回は喧嘩相手がCCPでしたが、次に絶対に勝たなきゃいけない相手は
このKINスグルなわけです。
ここで造型的に前回を下回れば、原型師としても問題なわけで俺の力量も
大きく問われちゃうぜコノヤロー。

というなかなかのプレッシャーの中、ゴング。

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そもそも

普通に面白かったキン肉マンが、圧倒的な面白さになったのが7人の悪魔超人が出た時。

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明らかにその時期のジャンプ爆発の牽引力はキン肉マンでした。
その後怒涛の快進撃を続けるジャンプですが、キン肉マンがまず一歩先んじてた。

ほんと当時の男の子達の熱狂は凄く、回し読みや、借りて読むんじゃもう待てない。
みんなが170円握りしめてジャンプを買いに走るようになった時期です。
北斗やDBなど後続ライバル作品もどんどん出てきて、周囲がヒートアップする中
キン肉マンがまず眩しいばかりの上り調子でジャンプ爆発の看板だったんですよね。

その爆発のきっかけこそ、徹底した悪役7人の悪魔超人の登場であり
大将、バッファローマンの存在感ってのはあったと思います。
初めてこの1000万パワーがジャンプに出てきた時の衝撃は、相当なもんでしたぜ。
募集で現れた若干フレンドリーっぽい敵との連戦が、みるみる血の通った死闘となり
まさに少年漫画の王道の基盤が構築されていくさまを、俺らは並走しながら体験できたわけです。

圧倒的な存在感。そして絶望。 即、子供人質の超こわいオッサン。
初期バッファローマンが持ってたものは、そういう迫力。

という原体験、インパクトをもったうえで、今回のバッファローマンに臨んでおります。



さて、ここから具体的な製作記。

実は、バッファローマンの原型を上げる予定は自分の中では去年内、
つまり2014年内ってことでスタートしてました。
で、今年の2月のWF展示には合わせたいと思ってたんですが
別件が各種大詰めだったもんで、勝手言って延ばしてもらい、それからズルズルと
俺都合で延ばしてもらい続け、納品したのは夏前くらいだったと思います。

最初に提示されたのがこちら。

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これを忠実に、ということではなく、こんな感じの構えたポーズで、という参考として。

俺がCCPの作風を理解したのもあって、今回は割と好き放題任せてもらえました。
さらっと簡単に書いてますが、そのジャッジしてもらえるのともらえないのとじゃ、大違い。
プレッシャーや責任も発生しますが、自由という強力な武器も得るわけです。

で、当時の絵からまんまバランスをとる方法もありますのが、キン肉マンは現行でも進行中ですから
基本的には総合的なイメージをとることになります。

まず、サイズ割り出して等身を決める。

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その寸法を基準に芯を作成。

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ソフビ原型にあたって、稲坂君からの詳細な指示が来てますんで
それを読んで、あらかじめ切断する嵌合部分を作っておいて、芯に組み込んでおきます。

で、決まったら、次は顔。

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作った日付見たら去年の11月の後半。

で、この顔ですが、現行のイメージをおさえつつ初期イメージもカバーできるよう
若干アゴ強めで作ってます。ハッキリと初期顔、現行顔でやればよかったのかもですが
この段階ではビシっと一発で片付けるべく、定番顔目指して造型。


決まったところで、本造型スタート。


グイっとポージング開始。



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最初の段階でアーマーをつけることは決まっていたんですが、意外とソフビの制約はキツイす。
インジェクション造型に慣れてる方からすると片手片足を封じられるくらい制約がある。

まあその辺は疑問に対し、ここをこうしてくれれば再現可能、という回答も来るんですが
それでも俺が表現したいポーズと干渉する部分がヒジョーーーーにある。


というわけで、出来るだけ逃がしている右腕を

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なんとしても手前に引き寄せたいなどの苦慮の末(アーマーのトゲめ!)、ポーズ確定。
確か1回この段階で上半身全てひっぺがして作り直した記憶が。

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基本的にはスカルピーファームかグレイで製作してます。どっちか忘れたけど
上半身はグレイだったかなー。グニグニやった記憶があるんで。
で、腕と足のカバーは、当たり用の仮パーツとは別に、同寸でレジンを削り出し
成型したものに置き換えてます。

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で、一応の完成までこぎつけました。

ここから最終的なCCPチェックが入りますが、生産上、ソフビだと手の表現とか抜けないので
もう少し抜きやすい形状に変更するとか、そういうチェックのほかに、最大の難点だったのが

角。

これがね、微妙なんですよ。もともと自在な作画で微妙ですけど、横フォルムでこれだけ
欲しいと思っても、

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正面だとそこまで要らない。

太さ問題もある。

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というわけで何度もここは作り直して、実地でチェックするしかない。
明確にこのシーン!と言い切れないのがキン肉マンの難しいところです。

しかし今回も稲坂ハンドリングの中、理不尽な修正もなく、こちらの要望を理解してもらい
前回とはまったく違っていい環境で作業出来ました。
CMC史上もっともスムーズに進行したとかで、問題点があったとすれば
グズ原型師がなかなか完成させなかった、くらいじゃないでしょうか。すいません。


かくしてどうにかOKが出て、そこから複製、彩色、検証してもらったところで
先日やっと発表&予約開始ということになりました。

bf15.jpg

実際、KINスグルに対して圧倒的な絶望感を与えられる存在として
必要な表現は出来たかなと思ってます。

これ突っ込んで来たら怖い、直進だけじゃない、、避け切れない技が来る!という
という相手の恐怖感を知りながら、その状況をニヤリと愉しむ1000万パワーの悪魔超人。

後に自分の意見に従う、信念の男へと育つ萌芽を垣間見せつつ
莫大なパワーを巧みにコントロールする、技の発動感みたいなものが出せた気がしてます。

彩色はこちら完全にノータッチですが、この抑えた感じとかは
まさにこちらのイメージ通り。素晴らしい。

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という感じで、バッファローマン製作記でした。

製作中はほぼ見返すことがなかったイラストも結果的に、比べてみたら
割と忠実な気もします。

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しかし最大の苦労は筋肉ではなく、アーマー。
スカルピー原型の段階で、4分割したアーマーがあの屈んだ体型に合わせて
違和感なくはまる、というのがホント厄介でした。複製終わってからやりゃよかったな、と。
作業的には本体と同じくらい時間かかった気がします。

さて

この後、すでにアナウンスもあった六騎士版のアシュラマンの原型は完成してますが
バッファローマンとは別の意味で挑戦し、進化していると思うので、お楽しみに。



おしまい。




と、

一般的な製作記はここまで。

ここから先は作る際の姿勢的な部分。
キャラ造形に、原型製作時の考え方に興味のある人だけ読んでください。


基本的にハリケーンミキサー前の状態を作りたかったわけですが
ご存知のように初期ゆで絵をそのまま立体化するのは難しいわけです。
そんな場合の考え方、キャラ造型の場合どこにポイントを置くのかを
作り方同様、書いておきます。



いきなり要点ですが、製作にあたって迷う時は、本来作者が描きたかったのは
こういうことだったんではないか、という「読み」を基準にします。
連載時何をイメージして描いていたか、ということを推察するわけです。

週刊連載の忙しい中、とことん描きたい絵を納得行くまで描けるわけじゃないですから、
マンガ原稿そのものに残っているのは真実であると同時に、アイコン的なものでもあります。

先生の抱いていた理想と、作画状況にギャップがないとは限らない。
本当は締め切り気にせずとことん描きたいはずですからね。
マンガはコマの流れやスジ運びが重要でもありますし、1人のキャラの描き込みだけを
追い掛け回すわけにもいかない。

だから今回で言えば、突進して最大の武器であるロングホーンで突き上げる技を
先生がどんな風にやろうとしていたのか、どうカッコよく描こうとしていたのかを
考えるわけです。理想や目標、つまり先生の魂と呼ばれるべきものが向いていた方向に
何があるのかを理解する、なんつーと気取りすぎですが、ま、そんな風に読みとる努力をするわけです。


その読みを現実の立体に落とし込んだ場合、原稿に忠実なポーズとは差が出てくる場合がある。

簡単な例で言うと、マンガ連載時にコマ中では解像度72で進んでいるものが、
イラストだと144になる。でも立体にした場合、最低でも解像度600が要求される。
描いてなかったとしても爪や血管があり、靴や手袋にはステッチやシワがあり、
その角度で地面と対した場合、足首はこうならざるを得ないとか、追えば追うほど
つまり解像度を上げれば上げるほど情報が隠れていることがわかります。
CCPの場合の「実際に超人が実在するならば」ということであれば、それに合わせた
解像度というのもおのずと決まってきます・

でも解像度向上にこだわって、ハイエンドな情報だけ追って、理詰めで積み重ねても、
それがゆでたまご世界なのかっつーとそうでもない。
情報過多は逆にただの造型側の陳腐な自己主張になり、作品世界を壊すこともあるわけです。


そこでやっぱり作品やイラストを読み込んで、トータルで先生が何を求めていたのか、
何を理想としていたのかを類推、考証して判断し解像度600の中で調整する必要性が出てくるわけです。

あくまでこれはゆでたまご作品の立体化であり、作者のビジョンを具現化するんだという
滅私的な姿勢が、キャラ造型には不可欠。勝手な判断はせず、最大のファンであれ。
だからここが一番、情熱的でないといかんわけです。

でも

それもあくまで読み、つまり仮説。いくら情熱があろうと、それはテメーの中の話。

ですんで、検証が必要です。


読みを踏まえた上で、作品全部の中で、バッファローマンがどっち足から踏み出すのか
技のヒット時、この距離でこうぶつかる場合、どういう流れがその前にあったのかというのを
冷静に検証しつつ、整合性をとりポージングの方向性、つまり「切り口」が決まるという流れです。

基本的には腕の太さや胸筋の繊維や、髪のふくらみから角の線の数まで
すべてコマのどこかから引っ張ってきてあり、俺的にはこうだと思ってる、みたいな安易な判断はしません。
その要素の濃く残ってる薄く残ってるの差はあったとしても、基本は検証ありきです。
現実的なアレンジが発生したとしても、ゆでフィルターを必ず通すわけです。

だから立体ゆえの情報を加味というより、本来目指したであろう表現に高解像度で
「戻す」「近づける」作業に、徹するわけです。


俺が思うに「検証」だけによる2次創作だと近づききれない事が多々あります。
そもそも2次元に対して3次元からのアプローチというだけで、かみ合わない部分があるのを
消去法みたいな検証だと、よく出来た劣化コピーになってしまうと思うわけです。

じゃなく作品への洞察の深い「読み」があってこそどうにか3次元でもスタート位置が近づけるわけで
後ろから追いかけるんじゃなく、並走を目指すからこそキャラクターの本質に近づけると思うわけです。
この読みこそが、立体にする「切り口」であり、本来原型師に求められるものだと俺は思ってます。
立体への再構築には原稿の模倣だけじゃ足りない。その陰にある情報を見出す必要があると思うわけです。
なんとなくそのキャラのアイコンは備えているものの、なんかそうじゃねえんだよなあという人形
多いじゃないすか。原因はそういうとこにある気がするんすよね。

と、ここまでがキャラ造型に関するハードル。


加えてもう1つの超えるべきハードルとして、CCPの商品であるということ、があります。
保坂稲坂のダブル坂が築いてきたものに惚れこんだファンを裏切らないということ。
信頼して任せてもらってるとしても、そこはやっぱり絶対に守りたい筋道です。
ここは一宿一飯の義理でもあり、返せないなら渡世の恥。
造型的には喧嘩相手としては捉えてますが、仕事として請け負った場合、通すべき筋がある。
いくら上記の理屈をコネたところで、CCPから出す商品がCCPらしくなかったら元も子もない。

まず、俺に賭けてくれている担当である稲坂君に喜んで貰わなければいけないし
そこにGOを出した延藤社長が喜ぶ形でまとめられないのであれば、自己満足の野狐禅でしかない。

ということをすべて含めたうえでの判断が、商業原型におけるサンダーロードスタイルの
方法論であり、造型への切り口っつー感じですかね。

なんで今回こんなに詳しく書いたかというと、稲坂君向けの説明です。
毎度、話して説明する場合、俺がテキトーなうえに面白がって話があっちこっち
飛ぶわけですが、ちゃんと文章にしておこうかな、と。
メールで送ってもいいんですが、せっかくなんで製作記にプラスしとけば
興味ある人もいるかな、と。

彼にはよく、バカじゃ造形できない、頭よくならないと上手くならない、なんつー事を
言ってますが、版権物ってのは、他人様の大事なキャラを預かる仕事です。
正しい愛情と敬意、そして高度で冷静な判断力で向き合ってこそ、スタート位置です。


というわけで、ここまで個人的に詳しく書くのは今回が最後と思いますが、次回からはもっと
早めにリアルタイムでお届けできるよう、CCP経由で情報を一元化して
メイキングをお届けできればと思ってます。

ぜ。
posted by サンダーロードスタイル at 00:13| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする