2017年04月10日

4月第3週 リバリバ週報

先週、念願の並河靖之展に行く。七宝工芸。

漫画ばっか読んでオモチャばっか買って口開けっぱなしで
全然工芸に興味のない人に説明しますが、
何を見たかったかというと要はこれです。

174101.jpg

琺瑯。ホーロー。

田舎の病院ホラーには不可欠な洗面器とか、ホーロー加工の典型。

もしくは田舎の廃村ホラーには不可欠な看板の加工処理とか。

174102.jpg


つまりは金属にガラス質の釉薬をかけてコーティングしたもの。

なんでも一番古いホーロー加工品は、紀元前1425年頃と推定される
エーゲ海文明のものらしく、青ガラスを用いたものはミケーネ文明とも
つながりがあるらしいすね。


ってことはミケーネ文明のこれにも

174103.jpg

ホーロー部分があると推定していいでしょう。


で、同系統の技術を工芸品としてくくったのが七宝。


有名な古い七宝と言えば、これですね。

174106.jpg

窯に入れたのか炙ったのか知らないすが、よくまあこんな
大きいのを、と思ったけどピラミッド建設に比べれば
楽勝プロジェクトか。

この有名な造形をモチーフにしたのがおそらく


174105.jpg

ゲンゴロウ怪人ではございません。


こちらでだいたい紀元前1300年頃ってわけですから、

ホーロー技術が如何に古くから確立されていたかはともかくとして

こないだアゴが折れてエポキシはみ出し接着で直した画像はこれ。

174104.jpg



ちがった、

これ

174107.jpg

時価300兆とも400兆円とも言われるマスクの修復に対しておそらく
使われたエポキシの値段は700円じゃねーかな。すげーな。
担当者、指10本切り落とされても文句言えないと思うけど。
俺なら足の指もついでに切り落としちゃうけどね。
ナメてんのか、って。


というわけで、世界中に古くからある技術、七宝が日本では明治になって
名古屋中心に発達したらしいすが、その中でも有名な七宝家が並河靖之。

その作品が目黒の庭園美術館で見られるっつーわけで、足を運んだわけですが

174108.jpg


並河靖之の作風というと、こんな感じ。

174109.jpg

作品を5個も見ると、んん?あれおかしいな。

俺こんなのを期待してたっけな?

超スーパーこまけーけど、全然グっとこねーな。
完全にこれ、金儲け用のチマチマ仕事でしかねーじゃんか。

というわけで、凄いんだけど完全に首をひねりまくる。

で2階の展示に行くと、同時代の別作家の作品があり
そこで濤川惣助(ナミカワソウスケ)の作品を見て思いだす。

ああ、俺が見たかったのこっちのナミカワだった・・・


西のナミカワこと並河靖之の有線七宝に対し
東のナミカワこと濤川惣助は無線七宝。

要は線で区切って釉薬を落とし込む有線に対し
釉薬の境目をなくしてグラデをかけるのが無線。

結果、無線だとこんな作品が出来る。

1741011.jpg

1741012.jpg

1741010.jpg

細密な並河も素晴らしいすが、よりワンオフ感、作品感が
あるのは濤川作品。

どっちがどうということもなく、2人はいいライバルだったそうで
並河作品を見て濤川は七宝の道を決意し、濤川作品を見て並河は
奮起して新たな作風を導き出したとの事です。

明治初期の外貨獲得の商品として、並河作品が担っていた
責任や規模を考えるとそうだろな、と思うし、まずそれありきで
後から技法を発想出来た濤川作品の方向性もそうだろな、と。


商品的意味合いの強い工芸作品も、ワンオフの芸術色が強い工芸作品も
印象派もベルニーニもデンチューもゾンビプラモもですが
基本、見る基準ってのは一緒。

テメ、何がしてーんだ、です。

こまけえ作業を見せてーんだ、であればそこを見るし、
新しい表現してーんだ、であればそこを見るし
笑わせてーんだ、であればなるべくニコリ部分を探すし
同じ感覚を受け取って欲しーんだ、であれば出来るだけ偏見なく
それを感じ取るようフラットな気持ちで接するようにしてます。


同じ超絶細密なものも、ただ細かいだけの病的な繰り返しを
するようなものの場合、俺は「チマチマ」と分類して興味の範疇外に置きます。

その労力は凄いんすけどね。
超こまかいジオラマや造形もそうですが、スゲーんすがそのスゲーは
胸に来るスゲーと、全然来ないスゲーがある。
全然来ない場合は、たいてい手癖に近い、考えてない細かさの場合が多い。
ただひたすら偏執的に手を動かす。
悪いけど、そういうのは見てて気持ち悪い。わざわざ表現する意味がない。
ただの程度の低い執着を見せられ、悪趣味という言葉しか浮かんでこない。
サイズも技法も既存の「ありき」の要素に乗っかるだけで
一切意味を考えず作ってるものを見てしまうと、目が腐っちゃうわけです。

その逆に、細密さがビシっと決まった時の快感ったらない場合もある。

その境界線は表現したいものがあるかどうか、に尽きるわけで
作品を通してやりたいことがあるのかどうか、に帰結するわけです。

やりたいことが明確で仕事が丁寧なら、こんな素晴らしいことはない。

好き!や、こうしたい!が出てる仕事は本当に面白い。

後半の並河作品は、ライバル濤川技術を消化した上で、見事に自分の
方向性を発展させてて、ちょっと泣けるくらい良かったです。

なんつーか、踏ん張ったんだなーって感じ。


1741013.jpg



1回行った事あるんですが、ちゃんと記憶出来てないので
迎賓館にはもう1度足を運んで、濤川惣助作品もちゃんと見てくる予定。

ちなみにやっぱりまだ一番感動したのは
尾張七宝で透き通った赤、赤透(あかすけ)を開発した
太田甚之栄作品で、それが一番まとめて見たい作家。


1741014.jpg

1741015.jpg


明治前半、金を混ぜ溶かした釉薬をさらに重ねて低温で焼いたりして
透明な赤が出せる事を発見したそうですが、
形やサイズで焼成時間が微妙に変化し、数秒でも窯出しタイミングがずれると
釉薬が溶け出して色がくすんじゃうんだとか。

ちなみに赤透とはこんな感じで、海外ではピジョンブラッドと呼ばれているそうです。

1741016.jpg



さらにちなみにですが、こちらのシシキュータマは

1741017.jpg

1個1000円で入手可能です。

日曜日に口開けて子供番組見て、タマタマキューキュー踊ってないで
たまには明治工芸の技術開発と、表現の努力に想いを馳せるといいぜ。
posted by サンダーロードスタイル at 18:27| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする