2017年06月05日

6月第2週 エクスタシーオブG週報

ここしばらくで圧倒的に俺の心を掴んで離さない作品
「ブックオブライフ」(以下マノロ)

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ギレルモデルトロがプロデュースして、日本公開するのかなと
思ってたらDVDスルーだったのでまったく気付かなかった作品。
ちなみにその時の情報は、メキシコが宇宙の中心って話って事。

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で、これがプロデューサーと監督。

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違った、これは食い殺されそうになったヒロインの
ペットの子豚、チューイのキャラクターポスターだ。




じゃなくてこっち



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この2匹は食い殺されそうになってません。


ちょうど5月頭の追い込み時、見損ねてたCGアニメ作品を
まとめて流してたんですが、失望するばかりにディズニーや
各社テキトー仕事が乱立する中、圧倒的すぎたのがマノロ。

きちんと子供に向け、独自の視点を持ち、主張をしっかり備え
マンガらしい気楽さと、大人向けサブカル風味を上手に混ぜ込み、
それでいて過去に敬意を払った上で、今を生きる者が成すべき仕事
(現代にやる意味)をキッチリこなしたもので、
もう30回以上見てますがまだ流せる。全然まだ新鮮に胸に来て泣ける。
吹き替えもクソ芸人やクソタレント抜きのプロフェッショナルオンリー。
素晴らしすぎてます。聞きごたえあり。

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各シーンごとに、いちいちどこが素晴らしいか語りたいくらいですが
大きいポイントはというと「地元愛」です。メキシコ愛。
ナショナリズムとはちょっと違う。まさに地元愛。
子供たちにメキシコの善と美徳の本質を伝えようという愛。

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それが本流にも支流にも随所にあふれているわけですが
その中で、ちょっと理解出来なかった楽曲の使い方が。

劇中で、オリジナル曲は決め時に、ありもののヒットナンバーは
サクっと盛り上げる時に使ってますが、他の映画のサントラを
そのまま流用したシーンがある。

使用曲は「続・夕陽のガンマン」のエクスタシーオブゴールド。
エンニオモリコーネの曲です。

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ガキの頃、我が家ではマカロニウェスタンやヤクザ映画を
極端に嫌ってました。ほぼ禁止ってくらいに。
理由は卑怯だから、だそうですが、当然親にそう言われたら
反発するのが男の子ですから、何本か見てみたわけです。

そしたらなるほど。卑怯。カタルシスなし。克己心なしの
開拓精神なし。矜持もなければジェントルハートもなし。
これは俺の好きな西部劇ではないな、と。
クリントイーストウッドも、若い時分がひどいのはともかく
年とった作品見てもダメだなこの親父はチンチンついてねーな、
としか思えないし脚本見る目もないし、普通に生理的な嫌悪感しかない。

ので夕陽のガンマンもイーストウッドもサンダー男道にとっては
まったくの認識の外。

ゆえにマノロの製作者がメキシコ愛としてこの曲を持ち出す
理由がまったくわからなかったわけです。
曲はいい。素晴らしくいい。
でも曲がいいってだけで使用したのではなく、理由があるはず。
そもそもマカロニウェスタンはスペインとかで撮影されてるし
特にメキシコ人が主人公でもない。モリコーネはイタリア人だし
なんでかなーと。

でその続夕陽のガンマンを見てみたらこれが・・・長い!
3時間あるんだけど、内容があって長いんじゃなく、
たとえば3人のガンマンの睨み合いのカットバック連射に
10分かけちゃう、無駄な長さ。もう完全に悪ふざけ。

でもエクスタシーオブが流れるまで我慢しようと期待してたら
まさかの汚い親父が無言でただ墓地を走り回るシーン(3分!)に
流れる曲。

https://youtu.be/ubVc2MQwMkg?t=45s

シーンはほぼうんこでも音楽は凄い。モリコーネの仕事は
否定のしようがないほど素晴らしくキャッチーで骨太。
画面を音楽が支えている。これぞ映画。の1シーン。


その後、マカロニウェスタンにも造詣の深い、ビデオの師匠に
話を伺う機会があり、メキシコ人にとってマカロニがどういう
位置づけなのか尋ねてみたら、納得。心の故郷説。


ちなみに、その師匠が以前、その方面で指示して出来たのはこれ。

https://youtu.be/tm78ml-OkEg

わかってる人がわかってる人に発注したお見事な仕事です。

というのを全部含めた上で、ひたすらその曲だけを聞きまくってる
時に見てきたわけです、ミュシャ展。

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言わずもがなの画家ですが
商業にまみれきってパワーを発揮してた画家が、人生の後半
地元愛に目覚めて、別方向に舵を切った作品群がまとめて見られる。

イラストレーターを意識した時、初めて名前を憶えて
ささやかな画集を買ったのがミュシャでした。
高校くらいだったと思いますが、その後、もっとグっとくる
たくさんの絵描きを知ってからは、特にそんなに意識することも
なかったんですが、後年、スラブ叙事詩の話を知るわけです。

地元愛、民族愛に目覚めた彼が描いた絵だとは知ってましたが
細かい事情を知る頃には、俺も大人になってまして。
そうはいってもこれくらいの仕事、愛情だけで出来るわけもなく
聞けばちゃんとパトロンついてたから出来た、とか。

なんだ、じゃあ恵まれてたんじゃん、と思ってました。

でもそれだけの仕事、この目で見て体感できるのであれば
必ず、と思って見てきたわけですが

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こ、これは・・・想像以上にデカイ。

しかもコントロールされた見事な仕事。
まず俺が発注されたら、どうする?
少しでも気を抜いたら完成までモチベーションすら保てない。
まず単純に内容を考慮しないとしても、このサイズの攻略方法を
確実なものにするだけでも、相当賢くないと無理。

加えて、絵具もこの量、維持するのは大変。その後の取り扱いも
含めて先読みして持ち運び可能に作らないといけない。

精密な元絵を基準に弟子に指示したところで、手直し量も半端あるまい。
さてどうやって攻略したもんか。
とまず、物理的な壁を前に圧倒されるわけです。

とにかく情報は受け付けず、体感できる感覚をフルに発揮して
存分に受け止めようと、本気で見てきた後、情報を知ってさらに驚愕。

一人で描いてたし、最初の1年では3作納品した。
そもそものパトロンも自力で見つけてきてた。マジで?

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 「マジだ。ナメんなよ」


現在の自分にとってミュシャは優れたデザイナーとしては
脅威を感じますが、描きたい方向性は俺の目指す頂とはまったく違うので、
やろうとしている事への作家的アプローチに関しては、
ああミュシャだな、というくらい。ご婦人受けしそうだなと。

しかし、外部に働きかけようとする男の仕事としては
括目する部分が随所にある。なかなかどうして男だぜ、と。

たぶん、かなり孤独感、孤立感と戦う時期があったと思います。
途中でチェコが独立した後、この作品に関しては居心地悪かっただろうな、と。
それでも国に尽くそうとし、協力を惜しまなかった。
誰に伝えようとしたのか。何を残そうとしたのか。

圧倒的な力量や技量とは別にその意気地に、男だね!と思えるわけです。

意味がある仕事が出来るのか、という問題は
仕事に意味を持たせられるのか、だけでなく
意味がある人生を歩もうとしているかどうか、という事にも。

消費だけで十分満足できる豊かな世の中です。
追従だけで十分満足できる。

しかし、それでも満足できない人々がいる。
より良くしようと、人生に意味を持たせようと
世界を前に進めようと、誰かに何かを伝えようと
善を足掻く人々がいる。果敢に挑む人々がいる。
たぶん、地元愛の本質は、クソ以下の選民思想みたいなものではなく
美徳の継承だと思います。正しく優しいことは、主張も維持も
難しい。それでもどうにかつなぎとめる努力をしたい。
自分の代で途切れさせないよう、踏ん張りたい。
その気持ちよくわかる。

マノロは大手映画会社に持ち込み、全社断られたそうです。
それをデルトロはメキシコにとって重要な作品になると
即決で支援を決めたとか。

その断った全社の作品より、マノロの方が良かったってのは
どういうことだ。

足掻く人々はカッコいい。
posted by サンダーロードスタイル at 00:06| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする