2020年01月20日

1月第4週 キカレテマセンガ週報

ペンタゴンしかないところドッキングでご予約いただいた皆様
ありがとうございました。売り方、宣伝の仕方に関してはもう
完全ノータッチで一切口を差し挟まない立ち位置となりましたが
原型だけは責任もって御期待に応えます。


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つーわけで
先週は書きたくもない話を書かされ、本来ならサクっと続いて
2週で片付く話が書けませんで。
屁みたいな説明業務週報はなかったこととして、一週、脳を戻して
いただきますが、そうは言ってもまたしても読んで損するどーでも話なので、
面白週報を期待してる方はスルーで。



で、

前回デジタル造型における目の問題を持ち出したわけですが、当然その点を
クリアしている腕利きもたくさんいます。武器が多い分デジタルで
出来る人が手掛けた原型はもはや手に負えないレベルです。
素人の俺が見て、そこ気にしねーのかよっつー完全なボンクラもいますが
絶対太刀打ちできない、勝つには同じ兵器を使うしかないと思わせる
圧倒的能力の持ち主も(パっと思いつくだけでも10人は)いる。
そういう人たちはデジタルでターボが掛かっただけでもともと
アナログ原型でもチョー上手い。何使ってももとから上手いわけです。

結局、造形の上手い下手、出来てる出来ないはツールの問題ではなく、
どこまで攻める攻めないをジャッジする判断力、つまり作り手の
「脳」にかかってくるわけで、今回そのへんの話。


映画で例えますが

肉眼で実際に見ている感覚から導き出される判断力が「目」ならば
それは仕事的にはカメラ、撮影の仕事。
画面内の対象の配置、構図を決め、色合いを決め、動きを捉える。

しかし極端な話、カメラの仕事は「そこにあるものを捉える」であり
ゼロからそこに持ってくるわけではない。創造性を問う位置としては2手目。

一手目はとなると、この企画を決め、脚本を起こし、俳優を選んで仕込んで
衣装や小道具をそろえ、一連の流れを決めてカメラの前で撮れるようにするまでの
材料を準備する作業。つまり素材の「吟味」があってこそ撮影は
実力を発揮することが出来、安心してカメラに収められる。

仮に一手目が間違いだったらもうどんだけリカバリーしても無駄。
スタート位置からしてゴール向いてないわけですから。
だからまずなにより重要なのは一手目の方向性決定と素材選び。


造形に限らず何かを表現しようとするならば、何をどう作って
どれくらいの精度で、どうアプローチして、限られた時間の中でその作品で
どうしたいのか判断しなきゃいけない。正しいプロデュースですね。

それにはなにより、情報を吟味して決定するプロデューサーにあたる
「脳」がまず重要ってことです。


実際問題、俺は造形における勝敗の8割はこの「脳」の精度によると思ってます。

自分の中にある膨大な知識や経験の中から、状況に最も適切だと思われる解を
直感によって導き、論理によって肉付けし、脳の中でイメージに固める。

具体的作業なんて実は機械的なもんで、イメージの段階ですでに戦いは終わってる。
手をつける前に勝負は決している。
って言っても実経験のある人なら過言とは思わないでしょう。

そんくらい作業前のイメージを精査していく「脳」は重要。一手目はほんと重要。



そして
表現するすべての人は、対価として共感を欲する。
共感しか求めない。

たとえ破壊や威圧を気取ったとしても、愉快犯的だったとしても
誰かの何かしらの反応や行動が自分の望むものを含んでいなければ
その人は自分の表現に納得できない。無反応が一番ダメージある。
表現はコミュニケーションの手段でしかなく、共感を求める道具です。

でもじゃあ共感ってのは何かというと、共通する感覚であり、同じような経験や
考え方を通過することによって得られた感情的な基盤の上に構築されるものです。

「だよね」も「そう来たか!」も共通する基盤を持ってればこそ起こる感情です。


さて、じゃあ造型的に表現として唸らせるにはどうすればいいのか。
毎回悩むのがここ。
ディティールで攻める、フォルムで攻める。
構図やアイデア、プレイバリューや塗装で攻めるなどいろいろテはある。

しかし自分が根本的に感心する造型やアプローチはなんなのか

「そう来たか!」と思わせられるアプローチはなんなのか
脳内で一手目を決める際、間違えたくない。
何をもってして正解な一手目となるのかと考えるに、
(ようやく本題にたどり着く)



「加点」

だという結論に。いやまだ仮か。
でもまあともかく加点する意志の有無だと思うんですよね。

これはただの足し算で、病的に彫り込んだり生理的に不快とも言える
過剰な繰り返しの加算ではなく、快感のポイントを理解したうえで
ピンポイントでそこに加算して快感を増幅させる判断力の事です。

具体的に現行の原型師を例に出すとカドが立つんで
死んだ人で進めますが


大理石の彫刻と言えば、その極限が布、特にヴェール表現だと思います。
カリカリ削るだけではなく、ある種のモーターツールも使って
細かく削り込んでいくわけですが

ベール彫刻で有名なジュゼッペ・サンマルティーノだと

こう


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すげーす。

でも一応、当然リスペクトありきでの個人的な印象ですが
あー技法に持って行かれちゃったな、と感じてしまうわけです。
ディティールありきすぎてズドンと来ない。

もう布の表現するのが面白くて、やりすぎ。落ち着けジュゼッペ。
気軽な同級生だったら、これさ6割情報減らしてもいいんじゃない?
特に鼻の下2筋はねーわ、お前ここふざけただろとか言っちゃう感じ。


あるいはアントニオ・コラディーニだと

こう


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オッパイ度が高い分、目がくらまされますがやっぱり過剰。
脊髄にコーンと来る快感の手前で、情報量の多さが
ノドにかかる小骨のように軽快な飲み込みの邪魔になる。

じゃあ布表現というくくりではありますが

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニだと

こう


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サジ加減が絶妙な気がします。隙というか余白がありつつ
満たされてる感じがする。踏みしめた足や、食いしばった口元に
きちんと目が行くし、技術発揮の小道具も泣かせる。さすが。

そしてさらに我らがマイキーこと
ミケランジェロ・アントニオーニだと
こう


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いやー、コレだな。

絶妙のサジ加減が素晴らしい。しっくりくるったらない。
凄すぎて友達になれない。

なんだろうこの感覚は。住んでる場所も時代も、食ってるものから
信じているものまで全然違うのに、極東の未来まで届く表現力。

技巧的な落としどころもさることながら
やっぱ判断力が違うという気が「凄く」します。
本能に頼ってない。技術を扱う脳の出来が違うって感じ。

カンバス地のような少し固めの布と、生気を失った皮膚の
質感差によるメリハリ。影の位置、間延びする面の置き方。
実に賢いと感じます。ジュゼッペやアントニーから受ける
技法に引っ張られる感もなく、自然と目に収まる。
「目の喉越し」が最高。なんもひっかからない。バチーンと来る。

強弱硬軟織り交ぜて、見て心地良い落としどころにたどり着く技。
加点すべきポイントを正しくおさえ、的確に判断して表現してる。

実はこの加点時に重要なのが、見て心地良い、という感覚。
たぶん、的確、と感じさせる部分は見て心地良い部分なんでしょう。
自然係数の何かに則った状態で正しく加点して表現を増す。

整合性や真実はともかく、見て心地良い方が最終的に一番説得力が出る。
見て気になる部分があると、結局飲み込みの邪魔になってしまう。

どうやってこの感覚というかサジ加減を磨けばいいのか
わかんないすが、まず第一には冷静さ、が重要なのかな。


他人の造形を見てる時、感心するのは「どう判断したか」が見えた時。

あくまで、基準となるラインを踏襲しつつそこに少しだけ
想像とは異なる加点部分があった時、納得しつつ感心する気が。
逆張りではなく、正しい方向への裏切りがある、みたいな。


気になるのは加点の判断はどう下されてるんだろう、って事ですが
脳内のイメージの段階で出来てるのかもしれないし、作業中に
急に見えてきて膨らませたのかもしれない。

自分の経験から言うと、具体的な加点部分は作業中に見えてくる場合が多い。
(あんだけ脳で決着つくとか言っといて)

もちろん脳内で練りに練ってネリネリで挑みますが、実際に原型が進行して
おや?という発見と、ソツなく作ったものの何か物足りない時
この方が気持ちいいんじゃないか?見ごたえがあるんじゃないかとウソを
盛り込む場合が多い気がする。前回の「目」もそういう事かもです。

そして実はそう「育つ」ことをある程度見据えて余裕をもって白紙の余地を
残したまま構築、造形する場合も最近は多いす。下手に最初に縛ると
泣きを見る場合も多いんで。

すると出来上がってきたものが、正解に導いてくれるみたいな
育つ方向を示してくれるみたいな事が起こる。これがなんともまた気持ちいい。
キャラが一人歩きするように、造形も自然に育ってくれる時がある。


ガンガン作ってる現役原型師と加点時のタイミングや判断について
みんなどうなのよ的話をしたかったわけですが、そんな時間はとれなそうなので
自己完結すべく、書き散らかしました。

俺みたいなどこの学校にも行ってない野良造型のヤカラは
そういう悩みで会話したことがないもんで、時々すごく話したくなるわけです。

特に、タイムスリップグリコのデジタル版を見たときに、この
2回で書いた内容がフラッシュバックしてしばらく考えてたもんで
ようやく書き出してスッキリしたという話。

もういいぜ。
posted by サンダーロードスタイル at 00:01| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする