2020年02月17日

2月第4週 ドライビング週報

もう製作記は(面倒なので)書かないって話だったところ、原型説明時
やっぱりそれ他の人にも聞かせたいというダイナマイトの要望で
今回もちょっとご説明。

でもこんなものは本当に読まなくていいです。冗談ぬきで。長いし。

読まなくていい、と断り書きをすると読んでくれの前フリ扱いかと
思われますが、製品見て気に入って買ってくれれば十分で、
それ以上は別に知らなくていいの、本当に。

誰が作ったか、どんな計画でなんて、これっぽっちも関係ない。
結果だけ、商品だけ見て判断してもらえばいい。

モチーフに俺判断をこれだけ入れました!という主張をしたい
連中とは全然違うし、いまさらサンダー造型が!と言う必要もない。
製作に関しては真剣に考えてますがそれを知ってもらいたい
わけでもない。

クライアントの希望として宣伝と商売の助けになるから書くだけなので、
基本、読むな。読む必要なし。製品だけで盛り上がるのが一番。

それでもどうしても興味があるんですけど・・・という人だけ、
先に進んで自己責任で。俺はちゃんと注意したからもう知らない。


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ではさてキン肉ドライバー製作記。

まず、40周年記念で大型アイテムを投入する際、象徴的なのはこれしかないと
ダイナマイト、サイクロン、サンダー会議でマッスルドッキングはすぐ決定しました。

じゃあドッキングと言えばまず一番印象にあるのはこれ。

対はぐれ悪魔。


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立体物も出てます。一番派手で見栄えが良い。まーこれしかない。


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そしてこれ。

対完璧。


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タッグトーナメントの決着。ある意味これしかない。


そしてこれ。

対四次元。


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初登場時。もうこれしかない。

この3種のドッキングから選ぶ場合、経営生産、販売、原型の立場から
それぞれ思うところがあるわけです。

で、せーのでどれがいいか意見を出し合った結果、
満場一致で対四次元ドッキングで決まりました。
一発。迷いなし。

原型師の立場からすると対はぐれ悪魔は、サンシャインがネックなんですね。
大物仕留めてる感は最高なんですが、サンシャインがまず絶対に安定しない。
立体物見てもわかるようにエフェクトナシでは自立不可能。
小さいのなら逃げられるし、展示用のFRP製なら中に鉄骨仕込みますが
CMCサイズのレジンとソフビだとちょっと・・・。

そして対完璧だと今度は武道が厄介そう。完全なる重量級を最上段に用意するのは
これはこれで製品的には危険。あと個人的にはテリーのドライバーの決まり感が
もったいない気が。ストーリー的には納得なんですけどね。

そんな2つに比べるとシンプルであっさりした敵チームながら
我々3人、リアルタイム世代のドッキングはやっぱり最初のドッキングでした。

話にも出ましたが最初のこれは「美しい」って印象すらあったんですよね。
わかってるんだけど、真正面からこれを見せられたというインパクトは相当でした。
あと我々オッサンたちが大好きな「カメハメが!!」というのも大きい。


かくして対四次元で決まって、いざ製作にはいるわけですが
とにかく今回は前人未到の4段重ねなので検証が必要。

なので普段は作らないモックアップを作って検討しようということに。



◆◆ 『 検証 』 ◆◆



作業としてまず最初にやったのはイメージの「抽出」。
どんな技でどんなフォルムがもっともイメージに近いのかの研究です。


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そして各種サイズを算出。基本の体型での比較図を作ったのちに
モックアップを製作開始です。

モックアップとは実物大の検討用模型で、だいたいバランスや質量が
読めれば製品化の問題や、輸送時の問題などを具体的にイメージして
予測、対応できる。

で、とりあえず組んでみたわけですが 


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最大の問題はドッキングの土台となるドライバーの中でもペンタゴン。

その羽根、翼の存在がキーでした。解釈、造形含め重要ポイント。
(実はここで創造性の問題としての四次元を選択した意味があるんですが
長くなるので割愛。)



模型的目線で進めると翼ならエフェクトとしても機能するし、
支えにもなる。キャラクターだけで成立させられるのはでかい。

ただ

悲しいかな、勝手に作りたくても条件がこれまたあるわけですよ。
ソフビだと厚さが必要だし、レジンは収縮が敵。折れたりもする。
経年で歪んだり、曲がったりもあり得る。
玩具の原型は全方向に好き放題作れるわけじゃなく、
かなり生産上の条件に左右されます。
強度といっても、輸送時への強度、普通に飾った強度、そして
夏の温度などへの強度も考えなきゃいけない。

という事も踏まえつつ、ペンタゴンの翼のA案がこれ。


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落下の勢いと直撃感を出し、エフェクト色を強くしたもの。


そしてB案がこれ。

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より接地面を広げ、背中側から支えられるようにしたもの。


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まずこの2案を持ってダイナマイトと相談。

そしたら手前に羽根が欲しい、と。

サ)いや確かに最初はそういう話でしたけど、バランス保持的にどうすか?
  ダメと思って後ろに回したでんすけど

ダ)後ろからの支えじゃなく、ペンタゴンの手とクロスするような
  X型で安定感が出ないか?

サ)片羽根を前方に出してってこと?翼の構造上、交互には
  ならないしなあ・・・

ダ)でもここで手前に絶対羽根が欲しい。見せどころだ

サ)確かに。可能であれば写真に納まらないくらいのをやりたいす。

ダ)なら強度と成型は引き受けるからその方向で。

サ)じゃあそれありきで成立させますんで最終C案として進行します。


という流れ。


安請け合いはしたものの、やはり翼が交互はおかしい。
折れ曲がったようにするか、体をねじるか・・・うーん

基本的にキン肉ドライバーはシンメトリーな技です。
そのイメージを崩すわけにいかないし、さーどうしよう。
商品時の必要性と創造性の融合ってのはどんな時も厄介。

と悩んだりする時は原作を読むに限ります。



◆◆ 『 方向性 』 ◆◆



するとペンタゴン側から考えるとして、この落下時に
悪魔将軍になく、ペンタゴンにはある武器が翼。
翼を使って逃げないことはないだろう。と考えられます。

おそらく通常の羽ばたき方向から考えるとドライバーを正面に見て
縦回転でスグルのバランスを崩そうと抵抗したはず。
羽ばたいて横には移動しないですから、揚力が発生するのが
前後と考えるとつまりは縦回転ですね。


しかし、キン肉ドライバー開発の経緯を思い出してください。
落下力によるアシュラ腕の切断にヒントを得て、
さらに激しい滝の流れの中で特訓してバランスを得たもの。

そして仕掛ける為の工夫としてさらに縦回転をモノにしているので
縦回転はドライバー側としても得意な力方向なわけです。

ペンタゴンが滝を羽ばたきで登れるくらいなら結果は違ってたかも
しれませんが、結局のところ羽ばたき程度の力では、
スグルのバランスは崩せなかったと考えられます。

だが

空を飛ぶものの特徴。飛翔者の特徴は冷静で最後まで諦めない点。
墜落の瞬間までパイロットは打てる手を模索するもの。

本来独壇場である空中で、縦回転が封じられた程度で
ペンタゴンが簡単に諦めるわけがない。
(技フィギュアの基本ですが、かけられてる方も主役です。)

とすれば次にペンタゴンはどうするか。翼の操作として残るは横方向の回転、
つまりきりもみ状態で振り切ろうとするしかない。
たしかにそれならまっすぐ落下するドライバーの軸を崩せる。
縦が封じられた今、横回転で軸をずらす抵抗は理に適った脱出方法です。

足を掴まれ、腕の付け根を抑え込まれて落下するペンタゴン。
迫るキャンバス。動かぬ手足。リアルにシミュレートするなら
唯一自由になる翼を頼りに全身でよじれるように抵抗したに違いない。

しかし

相手が悪かった。

悪魔将軍を抑え込んだほどのバランスを得ているスグル。
キン肉マンの名の如く圧倒的なパワーもあるスグル。を
ペンタゴンの逆向きになった飛翔能力では振り切れないですね、どう考えても。

さらに四次元空間から脱出を試みる師匠の身を案じながら入った技です。
絶対に決めたい。そのハートもまたいつも以上だったかもしれません。

結果、きりもみを試みたものの、勢いのままに叩き付けられ
翼は互い違いに。そして全身で抵抗しようともがいた結果
足のクラッチを外そうと試みてもがくも、スグルのパワーに抑え込まれ
ドライバーの形に落とし込まれた。

というのが今回の翼も含めた製作の方向性、キン肉ドライバー造形の
方向性になります。
これなら翼も出せるし、技にプラスαの意味も宿る。

とかなんとか考察している箇所がどれくらいのものかというと
つまるところ、わずかこのコマ間の話。


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もう、なんの騒ぎだっつー妄想と推察と検証ですが、これがきちんと
決まってないと造形的には完全にブレます。
指先まで意志が宿るのはこの方向性に沿ってればこそ。
確信をもって作るってのはこういう骨子が出来てこそ。と俺は思います。
なんとなく羽根1枚前に出せる?気分で作っただけじゃダメなわけです。


当然完全絵合わせで忠実に作って欲しいという意見があるのは
重々理解してますが、要はヒストリアかCMCアレンジか選択しなければ
行けない場合、今回はCMCアレンジということです。
この理由も明確なものがあるんですが、これは長くなるので割愛。



◆◆ 『 翼 』 ◆◆


では、いよいよ方向性も決まったのでいざ本番用、具体的製作。

まず翼。

そもそも人体を飛翔させうるサイズは絶対的に作るつもりでした。
ただ鳥の翼にはいろいろ種類があります。
長距離を飛ぶもの、小回りを求めるもの、速さを追ったもの。
いろいろ形状に特徴があります。

なので無知な俺はまず鳥の翼とはどういう構造なのか理解するところから。


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構造を学んだら


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表面を理解する。形状の変化もここで理解して頭に叩き込む。
どこで曲がってどこに力を入れられるのか。膨らませるならどこで
潰れていけない場所はどこなのか?筋肉が内側にあるなら
力を入れた時盛り上がる部分もある。その流れを理解してから
味付けに落とし込まないと、ウワッツラの造形に堕しちゃう。
なんとなくフワっと作る、は、ねーですね。俺の場合。


で、翼というものが理解できたら、原作で描かれている形の意味と
それに落とし込めるリアルなパターンに組み直して
どういう構成で具体的に羽根を配置するか考えてみる。


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リアルにしたはいいが原作のペンタゴンとかけ離れましたってなったら
アタマおかしいですかんね。原作で初列風切羽根が何枚ならば
それはこういう形状がブラッシュアップとして正しい、という
確信が得られるまでパターンを探ります。だいぶ書いて考えました。

そしたら

作業用の薄いプラシートに落とし込み、構成枚数を決めきる。


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それに従って、羽根そのものを造型して、量産体制がとれるように。
つまりスカルピーで羽根を1枚1枚作れる準備をします。


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アルミシートに形状をつけ、スカルピーを一緒に焼ける治具を作り
形状を試しつつ、曲がり具合や厚さなどテスト造形。テストは必須。


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これくらい厚さがないとソフビでは抜けないとかあるので
厚さ条件ありきの中、羽根っぽさを探ります。

で、もうかなり焼きながら破壊したのでこれしか残ってないすが
全体形状の角度用の治具も作ります。これはエポパテ。
全然実戦に投入できなかったエポキシスカルプトを消費。


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これに金属のシートで形状つけたものを固定して焼くわけです。



◆◆ 『 重心と強度 』 ◆◆


その結果が


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X型の構成で接地を維持しつつ、きりもみを封じ込められた感じ。

背中側はこう。


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これくらい支えを取っておけば安定するはずです。


ん?いきなり決着だけど途中写真はねーのかとな?

ないって、けっこうバタバタだったんだぞ。




で、そもそも羽根がなくてもペンタゴンは自立します。


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これに加えて羽根サポートがあれば、スグルとバスターを支えるだけの
安定感が維持できるという目論見。


で、ここにスグルが加わります。


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ペンタゴンの左足は少し伸び気味で前へ。
右足はスグルが引き付け君でとらえてますが
キリもんで抵抗するペンタゴンを強引にパワーでネジ伏せ
地面に叩きつけようという形ですね。

巨大なドリルを上の方で押さえつけて回転を止めようとしてる
的な感覚ですかね。

そしてギリギリ、シンメトリーな形状にはしませんでした。

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CMCテイストとしてのダイナマイトリクエストもありますし
製品としての個性、造形的な間合いの維持や方向性、
そして次にくるバスターとの関係性も含めて、もろもろ考え抜いた結果
導き出された結論でもあります。

しかしキン肉ドライバーらしさを失わぬよう、スグルの肘は上げたい。
ペンタゴンの足は開きたいし、スグルの腰を引いて体重かけて
勢いつけて落としたようにしたいという造形的な欲望もある。

それとぶつかるのが重心問題。



そもそもドッキングドライバーのこのシーン。
まずこのイメージを守らねばなりません。


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スグルとペンタゴンの身長差は23cmですが、迫力重視でかなり
ペンタゴンが大きく描かれてます。逆さにするとよくわかる。
それは全然いいんですが、それゆえに生まれるのがスグルの
姿勢のイメージ。


ざっくりと説明しますが

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マンガの身長位置をそのまま落とし込むとA。
これだと当然ながら小さすぎる。

バランスを考えて正しいサイズに落とし込んだB。
相当腰を引かないと頭の位置が高くなりすぎる。
でもそうすると重心が後ろに来すぎて強度問題が発生。

じゃあ前に倒してバランスとろうというCだと
今度はペンタゴンが自重の影響を受け始める。

ならなるべく引き付けて強度対策で、とDにすれば
今度はこんなのドライバーではない。
引き付けるとそもそもグレートの足も入らなくなる。


というわけで重心をきちんと維持しつつ
スグルらしさ、ドライバーらしさを保持しつつ
漫画の迫力ポイントもちんと考慮反映しつつ
現実的にバスターが入ってくる余地と重さを考えつつ
最終的にレジンとソフビでの強度的な点でのヘタレ対策を考えつつ
おおー!というドッキングを予想させるドライバーじゃないといけない。

考えることは鬼のようにあるっつーのにその段階で予約取っちゃうわけで、
モックアップ見せた10日後に完成写真欲しいとか言われましたからね。
さすがにその時はキレました。バッキバキに。

なんとなく作るだけなら気軽なもんですけど、強度問題はいくら
造型が良くても発生するわけで原型師としては原型の段階で
絶対にクリアしたい。検討しきっておきたい問題です。
けどそれには時間がかかるわけです。
形状維持した構造的バランスは考えて考えすぎということはない。
特に技フィギュアの場合は。

スグルがまっすぐ立って肩でバスターを支える、というのは
理屈の上では成立しますが、現実問題開いたスグルの足首だけでバスターの
重みを支えるだろうという読みは、通用しないでしょう。

だからスグルの足裏だけでなく、膝の内側がペンタゴンの腿に接合し
体幹ごと強度を維持して土台にするくらいにしないといけない。


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バスターは一度作っているので、重心の方向はわかります。
上じゃなくてけっこう前に来る。
それを考慮すると、スグルを気持ち後ろに引いて重心の予想位置を
決め込まないといけない。


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これだけ予測してたとしてもまさかの立たない製品が来ることもある。
俺の予測を大きく超えて問題が発生するので気は絶対抜けない。

原型では立ってたけど製品化したら立たなくなったんで
もうちょっと注意して作ってもらわないと困る!と真顔で怒るのが
ダイナマイト。
これを言われた時は稲坂君もいたので
「おー聞いたか今の!完全にアタマおかしい事言ったぞ!原型で
立ってたのに製品で立たなくなったら、悪いのは誰だ!」という騒ぎに。
結論は軽く押しても倒れないくらいの原型にしてくれなきゃ困る、です。
ほんと俺もよく我慢してるなと思うくらい考えなしにモノを言う。
今回も強度維持のためにスグルのアゴ下から鉄棒を通すとか言い出し
頼むからもう黙っててくれと言わせる男。常に俺のテンション爆下げ。

だからそんなこともあろうかと、をたくさん仕込んでおかないと
後々発生する問題に対処できないわけです。

ただ一応本人の名誉の為に言っておきますと、いいアイデア出して
天才的なリカバリーをすることもあります。うおー!?と驚く事も
何度もあったんですが、それ以上にポカも多いんで俺の方は
すっかり警戒するクセがついてるって話。

今回もスグルがペンタゴンのキリモミモーメントを腕力で
御するのであれば、少しだけ左の肩甲骨が出た方がよくないか?と
渋い指摘をしてくれたりして感謝してます、ナイス指摘。慧眼。

でも同時にバスターのケツから鉄棒で支えてとかも平気で言うので、帳消しです。

原型の段階で先読みに次ぐ先読みで安定さを生み出しつつ
造形的に見てそう感じさせないようにするのが難しいわけですが
それでもどうにかドライバーに関しては落としどころにたどり着けたと思います。


スグルもいい表情出たし。


dock26.JPG


絶賛進行中のバスター。御期待ください。
作りたかったんだグレートバスター。

ペンタゴンの抵抗以上に読み解くポイントが多いので
楽しみにお待ちください。カメハメ大好きだし、ブラックホールも
作らせてくれと頼んでたのにダメだったキャラなので
ウップン晴らすかのように愛情注いどります!
posted by サンダーロードスタイル at 00:03| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする